標準治療ってなに? スーパー治療があるのか?
標準治療
という言葉をご存知でしょうか。
ざっくりいって 普通の治療 という字面ですが、
この言葉をまず理解してもらうことが、治療に納得するうえで、極めて重要です。
定義めいたことを書くなら
標準治療とは、科学的根拠に基づいた観点で、現在利用できる最良の治療であることが示され、ある状態の一般的な患者さんに行われることが推奨される治療をいいます。
(国立がん研究センター 紹介HPより)
という感じがいいのではないかと思います。
科学的根拠に基づいた観点 で、とあります。
<科学的根拠>というのは、おおむね過去の臨床試験や、関連論文の存在を指しています。
ここ10年以上、重要とされている考え方で、
Evidence Based Medicine (EBM)
という言葉が念頭におかれています。(直訳すると 根拠 にもとづく 医療)
なんでその治療がいいと思うのか、とだれかに聞かれたときに、
この論文(臨床試験)が根拠だ! と言い張れるようにすべき、というものです。
私は、この考え方(EBM)は、好きです。
EBMはまったくもって完全というわけではありません。
(いつかEBMについても考えを詳しく書きたいと思います。
よく対義語としてExperienced based medicine(経験にもとづく治療)という言葉が使われます。ベテランの先生が、以前治療した何人(何百人)の患者さんかでうまくいった、みたいな感じで治療方針をきめていく場合にこの言葉が否定的な意味で使われていることが多いですが、それにも一理あると思っています。)
このブログの記事は、すべてEvidence based medicineの立場に則った、記載をめざしています。理由は、不特定多数の人を相手にした場合に、それ以外の方法では 科学的に正しい方法で、治療方法の是非を議論することができないからです。
話がそれましたが、多くの病院(ほとんどの有名市中病院)で、このEBMに基づく立場での治療が(実際に実施されているかどうかは別として)目指されていて、大学病院などの研究機関はこのevidenceを確立することを目的として日々の研究を実施しています。
つぎに、標準治療は
現在利用できる最良の治療であることが示され、
ある状態の一般的な患者さんに行われることが推奨される
というわけで、基本的には 普通の治療 ではなくて、ベストの治療、という意味です。
(医者はベストをつくすのが、標準)
標準治療があるなら、より治療効果の高い、金持ちむけの
スーパー治療、プレミア治療があるのか、というと
現時点では、膵癌については、それはありません。(少なくともEBMの観点では)
どんなに金持ちでも、偉人でも、膵癌でなくなる患者さんがいるのが、医療の現状です。
しかも、今の日本の医療制度では、どんな患者さんでもこのベスト治療であるところの標準治療を、比較的妥当な金銭負担で受けられるように、政府が計らってくれています。(これは、日本の医療の最もすごいところ 将来維持できるかは別として)
したがって、患者さんが治療を考えるときに、まず重要なのは、
自分にとっての標準治療がなにか
そして提示されているものとどのような違いがあるのか
を理解することだと思います。
このブログでは、様々な場面での標準治療と、そうでない治療、両者の功罪を説明していくことを通じて、患者さんにとってのベストな治療を考える手助けとしていきたいと思います。
(すべての患者さんにで標準治療が必ず最適、というわけではないと思いますので。)
ちなみに、この標準治療、膵癌については<膵癌治療ガイドライン>、という形でまとめられており、ネット上で無料で閲覧できます。(書店でも買えます)
ただ、基本的に私のような専門医が利用することを考えて書かれているので、一般の患者さんには少し難しいかもしれませんが、より深く勉強したいということであれば、見て見られることをおすすめします。
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