膵臓癌治療 外科医の本音

膵臓癌治療 外科医の本音

癌に悩む患者さんにむけた、専門医の正直な気持ち

2019-01-01から1年間の記事一覧

膵液ろうを知る ②なにが怖いのか

膵液ろうとは 膵臓の手術をしたあと、お腹の中に残っている膵臓から膵液という消化液が漏れ出すトラブルです。 これが起こると何が怖いのか。 膵液、というのはもともと消化液の一種です。 食べたもの(タンパク質、脂質)を分解吸収するために通常は腸の中…

膵液瘻(すいえきろう)を知る  ①発生率

膵液瘻(すいえきろう) 一般の人にはまず縁がないこの言葉、 このブログをお読みの方は、ひょっとしたらどこかで聞いたかもしれません。 膵液瘻(または膵液漏)というのは、膵臓の手術後の合併症(トラブル)の一つです。 よく膵臓の手術は難しい、という…

術後補助化学療法とは  手術できたのに抗癌剤いるの??   

術後補助化学療法とは? 簡単にいうと 手術が無事終わって癌が全部とれたあとに 抗癌剤の治療を行う というものです。 せっかく手術で”治った”のに、なんで抗癌剤?? と思う患者さんも多いかもしれません。 しかし、この、術後化学療法は膵癌の治療において…

手術の失敗とは 医療ミスとの線引き

「手術の失敗」 という言葉について、どう思われますでしょうか。 他日、手術の成功 という言葉について、感想を書きました。 その時も書きましたが、 失敗、という言葉もまた、外科医が患者さんにむけて使うことはまずない。 でも、何か難しいことをすると…

手術の成功 外科医の本音

ドラマでよくある 手術は成功しました! これって、どうなんでしょうか。 医療現場はテレビドラマなどの題材としてよく取り上げられます。 そこでは、手術が終わって、このようなセリフをよく目にします。 わかりやすいし、かっこいいからでしょうか。 手術…

膵臓癌 腹腔鏡手術はいいの?

腹腔鏡手術 というのをご存知でしょうか? お腹に小さな穴をあけて、そこから高性能カメラや、マジックハンドみたいな道具をつっこんで手術を行うものです。 傷の小さな手術 体にかかる負担が小さい手術 など、メディアでは、先端的な良い治療としてたびたび…

一口に手術といっても、内容によって危険度・術後は違います。

膵臓癌です。外科医に手術をしましょう、と言われた。 このブログの目的は、患者さんにできるだけ能動的に治療を選択してほしい、ということなんですが、手術のことを知らないと、考えようにも考えられないですよね。 もちろん各患者さんには、担当医から細…

手術をする前に 術前治療ってなに?   

膵臓癌です。手術をすすめます、といわれた。 (この記事では手術という言葉を根治的な手術、という意味で使用しています 根治的でない手術もたくさんあるので、それは後日) 多くの論文で、手術は、すい臓がんにとって唯一根治のチャンスがある治療である!…

免疫療法の是非

膵臓癌の標準治療における選択肢は 手術 抗癌剤 放射線治療 はっきりいってこの3つが主軸です。(積極的治療ではありませんが、疼痛管理・症状管理などの緩和治療も立派ながん治療なので、それを加えるなら4つ) 本庶佑先生のノーベル賞受賞で話題となった <…

標準治療ってなに? スーパー治療があるのか?

標準治療 という言葉をご存知でしょうか。 ざっくりいって 普通の治療 という字面ですが、 この言葉をまず理解してもらうことが、治療に納得するうえで、極めて重要です。 定義めいたことを書くなら 標準治療とは、科学的根拠に基づいた観点で、現在利用でき…

膵臓癌の治療をわかってほしい このブログの目的

このブログは、 一般の方(医者ではないかた)に 膵臓癌の標準的な治療をわかりやすく説明すること そして、治療についての外科医の本音を伝えること を主眼としています。 このブログをつくった目的は 半分は ”がん治療にかかわることになった患者さん、そ…

自己紹介

Elly26 職業 消化器外科医 専門領域 膵臓癌 200X年 京都大学医学部卒。卒後しばらく消化器外科医として勤務。 ここ数年は臨床業務の傍ら、膵臓癌をはじめとする膵臓疾患に対する治療の研究にとりくんでいます。 標準的な方法で(標準的治療方法、倫理指針を…