膵臓癌治療 外科医の本音

膵臓癌治療 外科医の本音

癌に悩む患者さんにむけた、専門医の正直な気持ち

術後補助化学療法とは  手術できたのに抗癌剤いるの??   

術後補助化学療法とは?

 

簡単にいうと

 

手術が無事終わって癌が全部とれたあとに

 

抗癌剤の治療を行う

 

というものです。

 

 

せっかく手術で”治った”のに、なんで抗癌剤??

と思う患者さんも多いかもしれません。

 

しかし、この、術後化学療法は膵癌の治療において、

 

非常に重要な役割(重大な効果)をもつ

 

と考えられています。

 

少なくない患者さんが

 

せっかく手術おわったのに、もう抗癌剤はいやです、、、

 

といって、術後補助化学療法を受けない(ドロップアウトしてしまう)

ことがあります。

 

気持ちはわかるように思います。

 

受けないことも一つの選択肢ではあるのですが、

ぜひ医者がこの治療を奨めている理由を理解して、選んでほしいというのが、

この記事の目的です。

 

術後補助化学療法の目的は 癌再発の防止 です。

 

膵癌治療の手術前のイメージはこんな感じです。

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でっかい癌の本体は、画像検査や肉眼でわかりますが

ちっちゃな〇でしめした微小病変(細胞レベル)は、今の技術ではあるかどうか事前にはわかりません。

 

しかし、膵臓癌においては、多くのケースでこのような微小病変があると推定されています。(理由は極めて高い再発率)

 

手術で切除するのは、点線でかこった範囲になります。

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おわかりでしょうか。

手術で全部とれた! と思っていても、実は癌がのこっています。

 

このようなケースでは、そのまま様子をみておくと、残った癌が再度成長して

 

再発

 

ということになります。

(癌が残っていたらすべて再発するわけではありません。たとえば免疫の力でおさえこまれて、実際には再発しない、ということも期待されます。しかし、、、)

 

主病巣(親玉)がとれて、目に見えない微小病変(子分)だけになっている間に

抗癌剤による絨毯爆撃をしかけて

癌を皆殺しにする

 

というのが、術後補助化学療法の狙いです。

 

術後補助化学療法の一般的なやりかたは

 

手術が終わって1-2か月後くらいから、治療開始

 

飲み薬の抗がん剤TS-1)を6か月間使用

 

というのが日本では一般的です。

(海外では、ジェムザール(ゲムシタビン)、という注射薬が一般的です。細かい内容や違いは後日)

 

この術後補助化学療法は生存率を高めることが科学的にかなり高い確度で証明されており、標準治療として強く推奨すべきであると考えられています。(特に日本では)

 

術後補助化学療法を受けるのは、正直しんどいと思います。

でも、膵癌の性質を考えれば、現段階ではおそらく必須の治療であり、

手術と術後補助化学療法はセットで考えるべきです。

 

膵臓癌の手術をして、術後補助化学療法を受けられなかった患者さんが再発したら、

多くの外科医は やっぱり、、、、と思っています。

(この現状にはかなり忸怩たる思いがありますが、、現実です。)

 

術後補助化学療法をあきらめるくらいなら、

そもそも手術治療をうけるかどうかを考え直したほうがいいかもしれない

とさえ、思います。

 

もちろん、やってみたら副作用がきつすぎて続けられない、というケースはあります。

そういう場合でも石にかじりついてでもやるのがいいかどうかは、(科学的にも)わかっていません。

 

しかし、最初からトライすらしない、というのはあまり妥当な選択枝ではないように思われます。(抗癌剤の副作用は本当に千差万別なので、結構楽に治療できる人もいます)

 

術後補助化学療法に対する外科医の本音はこんな感じです。

どうしようか悩んでいる患者さんは、参考にしていただけると幸いです。

 

ご意見などお待ちしております。