膵臓癌治療 外科医の本音

膵臓癌治療 外科医の本音

癌に悩む患者さんにむけた、専門医の正直な気持ち

膵臓癌の治療をわかってほしい このブログの目的

このブログは、

 

一般の方(医者ではないかた)

 

膵臓癌の標準的な治療をわかりやすく説明すること

 

そして、治療についての外科医の本音を伝えること

 

を主眼としています。

 

このブログをつくった目的は

 

半分は ”がん治療にかかわることになった患者さん、そのご家族・ご友人” のため

半分は ”自分” のため 

(なぜ自分のためなのかは最後で、、、)

 

 

あなたは 膵臓癌 です と言われたとき

 

多くの医師は、(日常業務として)落ち着いて事実を伝えます。

ほとんどの患者さんにとって、そういわれることが ”日常” なわけありません。

 

ひどくショックをうけ、そのあと何を聞いても、上の空になるのは、ある意味当然。

(多くの場合、続きは進行度、推奨される検査や、治療方針の説明になるでしょう)

 

癌の治療は、少なくとも今のところ、理屈っぽく、ある意味単純ともいえます。

 

でも、患者さんにとっては十分複雑で、わけがわからないものです。

 

多くの医者は、いろいろ手を尽くしてわかってもらおうとしています。

 でも、たぶんそれはできていません。少なくとも十分ではない。

 

我々外科医は、その患者さんに最適の医療を提供したいと思い、10年、20年の修練を積んで、勉強して、その治療を選択・提示しています。

 

一般の患者さんに、1時間説明して、それが最適だとわかってもらえるか、納得してもらえるか、私は不安に思っています。

(説明にかける時間は、病院・医師によって、千差万別です。私は、外来では、大事な話でもせいぜい10-20分くらいしか説明していません。入院されたり、特別に時間を取れた場合に、しっかり時間をとって説明するようにしていますが、それでも現実的には1時間くらいが限度と思っています。)

 

患者さんは、病院に来られるかたはみな、自分にとって”ベストの治療”を受けたいのではないでしょうか。

 

”ベストの治療” のなかみは、患者さんの状態・希望・考え方によって様々です。

 

 

しかし、私が唯一患者さんみんなに共通して必要、と考えているのは

 

その治療方針を理解・納得しているか

 

ということです。

 

治療は、毎回望む結果が得られるとは限りません。

むしろ、望まない結果になることも少なくありません。

膵臓癌の5年生存率は全体でおおむね10%前後とよく言われます。これは、すい臓がん、といわれて、仮に全員がなんらかの治療に回ったとして、10人中9人が最終的に膵臓癌でなくなった、という意味に近い。)

 

だからこそ、患者さんには、納得して、その時点でベストの選択枝を選んでほしい

と私は希望しています。

 

納得していようがいまいが、治療の抗腫瘍効果は、たぶん、かわりません。

 

だけど、治療の満足度、は絶対に変わります

命にかかわる問題なので、人生に対する満足度にもかかわるかもしれません。

 

多くの外科医が、少なくない場面で「先生を信じています。先生におまかせします。」といわれます。

 

はっきりいって、これはある意味間違っていません。

 結局具体的な作業(手術・投薬など)を行うのは、医者なので、このように伝えれば、具体的な治療は、非常にスムーズにすすむことがおおい。

 

ただ、治療のことを、何にも知らない、考えない、全部おまかせ、というのはやめたほうがいいと思っています。

 

その時その時の患者さんの”希望”によって、ベストな選択肢が変わりうるからです。

そして、その希望は、言わなければわからないし、治療のことを理解していないと、どういう”希望”をするのがよいかもわかりません。

 

また、そもそも「おまかせします」という相手(医者)が、自分にとってベストな医者か、というのが治療をうけていくうえで、かなり大事です。

 

日本に、外科医は約40000人いるらしいです。(日本外科学会 会員数より)

 あなたの目の前にいる医者があなたの膵臓癌治療にとってベストな確率は 

 

0.0025%(1/40000)ではありませんが、99%、ということはないかもしれません。

(感覚的には、50~70%くらい?? 根拠は全くありません。)

 

正直にいうと、多分患者さんにできる膵臓癌治療選択の最大のものは、主治医えらびだろうと思っています。

 

それは、なにも日本一の膵臓癌名医をさがせ、ということではありません。

(ごく一部の人にとっては、それが正解かもしれません)

 

自分の病状を理解し、選択できる治療を理解し、それが提供できる場所(医者、病院)をさがす、ということだと思います。

 

このブログは、すい臓がん治療とむきあってくれる患者さん、家族さん、友人のかたのために書きはじめました。

(多分そういう方でないと、このブログにはたどりつきません)

 

そういう患者さんの治療を担当させてもらうのは、我々外科医にとって、非常にやりがいのあることで、私の生きがいにもなっているように思います。

 

このブログが自分のため、というのは、すい臓がん治療を理解してくれる患者さんが増えることが自分のためになっている、という意味です。

 

(自分のところに来る患者さんをふやそう、とかいう趣旨ではありません。そもそも匿名ですし。)

 

長文になりましたが、このブログが治療の理解に少しでもお役に立てればと思います。

 

すくなくともまどわせて不利益をあたえることのないよう、

 

できるだけわかりやすく

正確な

そして嘘のない情報

 

を記載することを重要視します。

(特に最後は重視したい。そのことが自分の勉強にもつながると思っています。)

 

ご意見・ご批判をお待ちしております。